ワイナリー訪問記~シャトー・メルシャン椀子ワイナリー〜@目黒店 柴野
今回のブログ担当者は…?
皆様こんにちは。今回は目黒店柴野が担当させて頂きます
先日、ワインバイヤーの横山、6月よりワイン館ワイン担当になった遠藤と長野県上田市丸子地区にあるシャトー・メルシャン椀子ワイナリーに出張させて頂きました。
梅雨の時期でもあり、天候に不安がありましたが、晴れ女パワーなのか?天候にも恵まれました。東京から北陸新幹線で上田駅へ。上田駅は真田幸村一色。
そこからしなの鉄道に乗り大屋駅からタクシーで約10分位。そこには畑一面に囲まれた丘の上に椀子ワイナリーが立っていました。ワイナリーのテイスティングルームからは椀子ヴィンヤードが一望できる素晴らしい眺望です。
椀子ワイナリーのテロワール
今回、椀子ワイナリーの生駒さんにご案内頂きました。椀子ヴィンヤードの標高は650m。勝沼が300mほどだそうですので、高い標高にあります。
北は浅間山、西に北アルプス、南には蓼科山が広がるこの地域は千曲川も近く、扇状地の多い盆地であり、雨雲を防ぐ天然のシェルターになり、台風等の被害が少なく、また北アルプスからの涼しい風が吹き込む事で病害が少なく、健全な葡萄が育ちやすいとの事でした。また、昼と夜の寒暖差が葡萄にとって良い生育状況下となっています。
丁度伺った時期は、葡萄の枝がぐんぐん伸びる時期、青い葡萄の房もすでについていて、この房まわりの葉は風通し良くするために取り除き(除葉)、伸びた枝は摘心と言って切り落とさなければならない時期だそうです。
東向きに横向きに植えてあり、西陽避けに葡萄の房の西側の葉は残し、東は側の葉は取り除きます。(西陽が強く当たると酸が少なくなってしまう為)
広大な畑30haの中に8品種(赤6品種、白2品種)を植えており、昨年で葡萄の樹齢は長いもので20年。土壌は陶土と見間違える程の密な強粘土質土壌で乾くとカチカチに固く締まり、これは葡萄はストレスとなるが、強い葡萄となり、しっかりとした味わいを生み出すそうです。この広大な畑を社員7人で管理しているとの事。大変な作業です。
江戸時代末期から昭和初期まで、かつて上田は養蚕業が盛んだったそうで、元々荒廃した桑畑だった所を行政や地元の協力を経て造成し、2003年に椀子ヴィンヤードを開園。2019年より椀子ワイナリーを設立し、現在は約80tの葡萄から年間6万本のワインを生産しているそうです。
椀子ワイナリーのSDGs
この椀子ワイナリーは3つのミッションを掲げSDGsに積極的に取り組んでいました。
- ①地域との共生
葡萄畑の中にジャガイモ畑を作って育てたり、葡萄の収穫をする事で近隣の小学校の農業体験の場とする。
- ②未来との共生
他企業や大学との提携。
- ③自然との共生
台地の地形を活かして醸造所を設計。重力を生かしたグラヴィティ・フローを取り入れています。
また人の手によって葡萄畑を管理することにより、絶滅危惧種を含む生物が生育する環境が戻って来たり、ワイン製造において発生する葡萄の搾りかす等を発酵し堆肥として土地へもどしたり、醸造所の屋根に降った雨水を地下のタンクに溜め、農業用水にあてるなど循環型農業に取り組んでいます。
醸造について
2階の高さの建物の搬入口から収穫した葡萄は醸造庫へ運ばれます。選果した葡萄は窒素ガスを利用したバルーン式の絞り機で搾汁。
フリーランの果汁とプレス粕を絞った果汁をブレンドし、グラヴィティシステム利用して、建物の2階から1階にある発酵タンクまで、自重で果汁を移します。
温度管理をする為のジャケットを巻いた発酵タンクを使用。樽は約10社のフレンチオークを5〜6回使用。椀子ヴィンヤードで約200樽。最近の円安により1樽購入すると20万程になるそうです。樽熟成は年間18℃以下で管理。白は半年、赤は1年から1年半樽熟成をします。
11月、12月にMLF(マロラクティック発酵)する際は、暖かく加温できる部屋で発酵させます。樽の目減り分は他の樽より補填。ワインの量が減った樽はクォーターの樽へ更に減ったものはキュービにまとめて再利用するそうです。
オリも全て貯め、上澄みはアミノ酸がたっぷり含まれるので、ブレンドの際に使用したり、スパークリングに使用する事で瓶内二次発酵をしたような効果を得ながら、低価格で複雑な味わいを生み出すのに役立っています。
テイスティングラインナップ
- 椀子ソーヴィニヨン・ブラン[2021] ※信濃屋実店舗で取り扱っています。
淡いレモンイエロー。爽やかな柑橘の香りとほんのりとハーブのニュアンス。清涼感ある心地よい酸。3区の畑で3MHという香り成分がマックスの時に収穫し、7区の葡萄で味わいの深みを補い、合わせて醸造するそうです。
- 椀子シャルドネ[2022]
輝きあるイエロー。洋梨のコンポートの様な香りと樽熟成によるバニラやバナナ寄りな香り、程よく綺麗なコクで柔らかな飲み口。
- 椀子ロゼ[2021]
メルロ主体でカベルネ・フランやシラーのブレンド。赤ワイン用葡萄のタイミングで収穫したものだけでセニエ方式で造ると酸が穏やかになってしまう為、一部ダイレクトプレスの果汁を使用する事で酸を綺麗に残した造りにしている。オムニスのロゼ版といったところ。美しい濃いめなローズカラー。ほんのり酸のあるラズベリーやサンザシを思わせる香り。程よくコクも感じる辛口な味わい。
- 椀子メルロ[2019] ※信濃屋実店舗で取り扱っています。
メルロ主体。2019年より椀子で醸造。かつては勝沼で醸造していた。17年18年は暑かった年。19年は涼しい年。椀子は勝沼より涼しい気候の為、発酵温度が上がりにくいこともあり、涼やかな味わいとなっている。濃いルビーレッド。ほんのりミントやプルーン、カシスのニュアンス。ピュアな果実感とコク、優しいタンニン。ほんのり樽のニュアンスも感じられタンニンの細やかな味わい。この先も熟成が楽しめる味わい。
- 椀子オムニス[2017] ※信濃屋実店舗で取り扱っています。
椀子メルロより濃いめなカラー。カシスやブラックベリーのニュアンスと樽熟成によるバニラのニュアンス。タンニンが綺麗に溶け込んでいて余韻も長い。まだまだ熟成が楽しみな素晴らしいワイン。2009年がファーストヴィンテージでカベルネ・ソーヴィニヨンがよく熟した良い年だったので、ナパのワインの様にカベルネ主体で造ったようです。
今はボルドー右岸の様なイメージ。ブレンド比率においてプティ・ヴェルドを増やしており、2022年はフランとメルロ主体に15%のプティ・ヴェルドをブレンド。
畑を眺めながらのランチとワインは最高でした。椀子ロゼとの相性がとても良かったです。ワイナリー限定の椀子の泡もテイスティング。
椀子ワイナリーはワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリーを選出する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード2023」にて世界第38位に。ザ・ベスト・ヴィンヤード・イン・アジアにも選出されています。
さいごに…
今回、ワイナリーを自分の目で見て色々感じる事で、素晴らしいワインを生み出す作り手の努力や自然との共存、地域との関わりの大切さを強く感じました。丁寧なアテンドをして下さったメルシャンの生駒様に感謝致します。是非、皆さんもこの素晴らしいワイナリーに足を運んでみてはいかがですか?
信濃屋でも椀子ワイナリーのワインを一部、お取り扱いしております。日本ワインの実力と感動を一度お試しください。