
酒蔵・ワイナリー訪問記-新潟出張編-@ネット店 升田
今回のブログ担当者は…?
こんにちは。ネットショップ担当の升田です。いつもブログをご覧いただきありがとうございます!!今回は、ワイナリーだけでなく、オンライン販売を始めた日本酒蔵にも訪問してきましたので、その様子をお届けします。どうぞ最後までお付き合いください♪
東京駅から新幹線で約2時間。朝は5時起きの睡眠不足気味でしたが、久しぶりの日本酒蔵見学とあって行きの新幹線は一睡もすることなく、風景を楽しみながら新潟駅に到着です♪
今回の目的地は酒蔵やワイナリー、更には地ビール工場などもある新潟市西蒲区。まさにこの地域は新潟の酒処と言っても良い場所でしょう!!在来線から覗く風景は、信濃川の支流である西川に沿って農業水路が造られ、田園風景が広がっていました。
笹祝酒造
まず、訪問させていただきましたのは創業明治32年。生産量の実に9割が地元で消費される「地酒の中の地酒」と呼ばれる地元民から愛されている酒蔵「笹祝酒造」。2019年の醸造より原料米は全量新潟市産での製造に移行しました。特に栽培が難しく、現在は一部の酒蔵でしか使用されていない「亀の尾」は笹祝近隣のそら野ファームに特別栽培をお願いしている笹祝酒造でも大切にされている酒米も取り扱っています。


笹祝酒造は日本酒の製造工場であると同時に、地域の歴史や文化を守り、次世代へ伝えていく拠点としても大切にされています。日本酒や麹にまつわる体験もできるなど、楽しみながら学べる空間づくりがされているのが特徴です。また、施設内の建造物の一部は有形文化財にも登録されており、歴史の趣を感じながら訪れることができます♪


ここからは、醸造設備内で特に印象に残った特徴的な設備をご紹介します♪
まずご紹介するのは、お酒づくりの準備工程「蒸米(じょうまい)」。お米を蒸気で加熱し、デンプンやタンパク質を変性させて酵素で分解しやすくするための大切な工程です。笹祝酒造では、この工程に昔ながらの和釜と甑(こしき)を使用しており、伝統の技が今も息づいています。
さらに注目したいのが、明治時代以前に行われていた伝統技法「生酛(きもと)仕込み」。蔵に棲みつく天然の乳酸菌を呼び込み、自然の力を活かして発酵を促す方法で、深みとキレのある味わいが特徴です。とくに燗酒にしたときに、その真価を発揮するとのこと。まさに、時代を超えて愛される味わいです♪また、独自で酵母研究もしており、貴重な酵母も管理保存されており、伝統と進化を融合した酒造りを実践しようという意思を垣間見ることができました。



最後には、現当主の笹口氏に商品説明とテイスティングをご案内頂きました。オンラインショップで販売を開始した商品も含めてざっくりご紹介します♪
- 無濾過純米で造る「笹印」
- 新潟県の酒造好適米品種で醸した「淡麗純米酒」
- 毎年一つ、決めたテーマに従い新しい試み造る「笹祝 challenge brew」



主観の感想は「笹印」「淡麗純米酒」共に純米らしい豊かな味わいがありつつも、綺麗な酸と切れのある後味が印象的で、共に食中酒として活躍できる仕上がりだなと感じました。また、面白いのは毎年一つ、決めたテーマに従い新しい試み造る「笹祝 challenge brew」の新作BAMBOOSHOOTS。2025年3月をもって引退された前杜氏から世代交代をして、若返った醸造チーム。そんな製造チームは、言わば地面から顔を出したばかりの柔らかいタケノコ。これから更に地にしっかりと根を張り、天に向かって真っすぐ成長していきたいという想いを、名前に込めて生まれたのが今回の「BAMBOOSHOOTS」です。
BAMBOOSHOOTSは、笹祝酒造が若手中心で取り組んだ新たな挑戦酒で「酸貴白低(さんきはくてい)」という独自の四字熟語をテーマに掲げています。
- 酸:独自の「酸基醴酛(さんきあまざけのもと)」で乳酸発酵を取り入れ、酵母の純粋培養を実現。
- 貴:仕込み水の一部に清酒を用いる再醸仕込みで、濃厚かつ高貴な風味を演出。
- 白:焼酎用の白麹を使い、爽やかな酸味と複雑味を付加。
- 低:原酒でありながらアルコール度数12%台を実現し、軽やかさと飲みごたえを両立。
まさに「攻めに攻めた」日本酒で、笹祝酒造の新時代の象徴となる一本です!!信濃屋にも今後入荷予定ですので店頭販売も心待ちにして下さい♪

越後鶴亀
次に訪問しましたのは、笹祝酒造からも近く角田山(かくだやま)のふもとの街中にある明治23年創業の越後鶴亀。街中に溶け込んでいるので、こんな住宅街に…という驚きもありました。越後鶴亀では「品質こそすべて」という信念のもと、敢えて大量生産を行わず、小仕込みにこだわって丁寧に酒造りを続けています。
事務所に飾られていたのは、皇室関係のお写真や賞状。越後鶴亀は、長きに渡り皇室献上蔵として名高い酒を醸してきました。若かりし頃の皇太子ご夫妻の祝賀酒や、皇室の結婚式に献上された歴史を持つ、由緒ある蔵であることを感じることができました。

醸造設備に内の印象は…まさにクラシックスタイル!!最新の設備に投資することよりも手間暇をかけ、敢えて小仕込みにこだわった伝統的な手造りが主体となっていました。
注目すべき点は、全て瓶貯蔵していることです。その理由として、杜氏のこだわりは「お客様に一番美味しい状態で届けたい。」そのために、出来るだけお酒をタンクの中では熟成させず、しぼった時に近いフレッシュな状態で保存することで、味わい深く、伸びやかな越後鶴亀をお客様に召し上がっていただくことができるとの考えの元、造ったお酒は全て瓶貯蔵しておりました。





現在、越後鶴亀の杜氏は横田氏が務めています。難関である国家資格「1級酒造技能士」をなんと首席で卒業し、杜氏となった経歴を持っている天才肌の職人。多忙の中で挨拶だけのお時間となりましたが、ふと目にした杜氏のデスクには遊び心あふれる趣味の品々が並んでおり、思わずこちらも笑顔に…(笑)共通の趣味を見つけたときには「いつかこの方と一緒にお酒を酌み交わせたら楽しいだろうな…」と、そんな気持ちがふと湧きました♪
越後鶴亀でも試飲をさせていただきましたので、オンラインショップで販売を開始した商品も含めてご紹介します♪
- 米の旨味がきいた純米酒
- ワイン酵母を使って醸す純米吟醸


感想です♪スタンダードの純米酒は、軽快でなめらかな口当たりと、純米らしい旨味が特長です。後味のキレも良く食中酒と最適な1本。そして、個人的にラベルもとても好きです!!クラシックな日本酒らしさを感じさせながらも、キャッチーで目を惹くデザイン。越後鶴亀らしい、縁起の良いネーミングも相まって、思わず「晴れの日に飲みたい」と感じさせてくれます。近年では、「SAKE COMPETITION」のラベルデザイン部門で1位を獲得したこともあり、その芸術性の高さにも納得。つい手に取ってみたくなる、そんな魅力がありますね♪

最近では目にする機会も増えましたが「ワイン酵母」を使った日本酒造りを真っ先に取り入れたパイオニア的な存在でもあります。リリース当時は、ワイン酵母を使って日本酒を造っているのは、全国でもほんのわずかでしたから、先見の明があったことが証明されたのだなと感じます。弊社のワインサイトで日本酒を取り扱い始めて間もないので、是非ワインラヴァーのみなさまにも、ワイングラスで飲む最初の日本酒としてもおススメしたい1本です♪

カーヴドッチ
新潟出張最後の締めは1992年に創業した「滞在するワイナリー」ことカーヴドッチ。「新潟ワインコースト」として知られるカーブドッチの周辺には、5軒のワイナリーが隣接しています。
また施設内には「ワイナリー」「ブリュワリー」「レストラン・カフェ」「ウエディング」「温泉」「ショップ」「オーヴェルジュ」と…まさに楽園のような場所で、ワイン好きはもちろん家族連れ・友人・カップルとどなたでも一度は訪れて欲しい素晴らしい空間でした♪



カーヴドッチのテロワール
まずは取締役でもあり、ワイン醸造にも携わっている掛川氏より醸造と栽培の説明をじっくりかつ丁寧に聞かせていただきました!!カーヴドッチの特徴的なテロワールについて記憶が鮮明なうちにご説明いたします♪
カーブドッチの自社畑は、日本海から約1kmの場所にあり、海の影響を強く受けます。海が近いため、土壌は100%砂質で水はけが非常に良好。角田山の麓にあるため、風通りも良く健全なブドウの生育に適しています。フラッグシップの名前のとおり「SABLE(サブル)」=「砂」がカーヴドッチを紐解くキーワード。とりわけ、砂地由来の「軽やかさ」「高い重心」「華やかな香り」が共通して感じられるのが特徴です。これらは日本の他産地ではあまり見られないカーヴドッチの特徴と言えると思います!!




砂地での栽培は収量こそ多くないものの、剪定の手間が省けるといった利点もあるようです。確かにブドウ樹を見ると樹勢はあまり強くないのかなと頷けます。単に「樹勢が強い=栽培に適している」とは言えず「高品質なブドウが育つこと」「過度なコストをかけずに管理できること」「一定の収量を確保できること」などのバランスが重要だと掛川氏は教えてくれました。
カーヴドッチのブドウ品種
カーブドッチのワインは一言で言うと「その土地ならではの味=テロワールが表現された味」をワインにどう表現できるかを最も大切にしています。その中でも、カーヴドッチの代名詞ともいえる品種が「アリバリーニョ」です。現在では、北海道から九州まで様々な地域で栽培されていますが、国内で最初にアルバリーニョを大々的に取り組んだのはカーブドッチです!!

明らかに他県の「アルバリーニョ」とは一線を画す個性を放っています。掛川氏の話す「その土地ならではの味」をワインから感じさせてくれます。掛川氏曰く、現在は「アルバリーニョ」がカーヴドッチのテロワールを最大限に表現できる品種だと断言しておりました。また、昨今の異常気象への対応も視野に入れ、将来的な気候変動に順応できるブドウ品種の開発にも力を注いでいました。変化し続ける環境の中でも、質の高いワインを生み出すためのビジョンには感銘を受けました。ちなみに…将来性のある黒ブドウ品種を一つ挙げてもらいました!!ヒントは「アルバリーニョ」にあり!!同じ地方の品種「メンシア」は楽しみな品種と教えてくれました♪今後、商品化が成された際には要チェックですね(笑)
その他の設備も、ワイナリーツアーを実施しているだけあって、地下カーヴや熟成庫など見どころ満載!!私を含め初めて訪れたスタッフたちは、各所を巡るたびに思わず「おぉ…!!」「すごい…!?」と感嘆の声がもれてしまいました(笑)中でも個人的に印象的だったのは、ワイナリーの財産とも言える熟成ワインの存在。近年では「ワイン特区」の影響もあり、全国のワイナリー数は急激に増えていますが、カーヴドッチワイナリーはその中でも歴史ある存在だと言えます。地下のカーヴには、じっくりと熟成されたワインがずらりと並んでいるのは圧巻でした。さらに…直売所には熟成ワインに力を入れたヴィンテージセラーも設けられており、そこで貴重なバックヴィンテージを購入することができるんです!!ここに来る前に購入していただけに…泣く泣く諦めました…




日本ワインの特徴でもあると思いますが、ワインを製造してから消費までのスピードがとても速く、熟成が進んだ日本ワインを目にする機会は多くありません。そんな中、カーヴドッチではそれが楽しめたことが現地ならではの貴重な体験でした♪
2017年のピノ・ノワールを飲ませていただきましたが、当時は瓶詰時に亜硫酸を少量添加していたためか、とても綺麗な熟成をしており購入しかけました(笑)個人的には「SABLE(砂)」のニュアンスも感じ、カーヴドッチのテロワールを表現している黒ブドウ品種だとも感じました♪
- 品種個性とテロワールを忠実に表現したセパージュシリーズ
- 醸造家 掛川氏の遊び心が詰まった動物シリーズ
- 食用ブドウの可能性を追求し、楽しくて(FUN)ハッピー(HAPPY)な味わいのファンピーシリーズ



最後には、2023年にリブランディングを行い「CAVE D’OCCI BREWING」として「ワイナリーらしさ」を詰め込んだビール造りについて醸造責任者の草野氏からお話を聞かせていただきました。
草野氏は、現在ワインとビールの両方を手がける醸造責任者。なんと、若干30歳という若さでこのポジションに就任したそうです。外部の私から見ると「責任重大な役職だな…」と思ってしまいましたが、ご本人は「そんなに重たい役職ではないですよ(笑)」と、さらりと語っていたのが印象的でした。
もともとワイン醸造に携わっていた草野氏は、カーヴドッチの哲学を背景に、ワイン造りで使用したブドウの果皮やワイン樽、ブドウの葉などを活用し、ビール造りにも挑戦。ワインの技術と経験をビールに活かすという、他にはないアプローチでビール造りに取り組んでいます。ワインとビール、それぞれの文化が交差し、新しい魅力を生み出していく。その意気込みが、ひしひしと伝わってきました。
現在は、レストランの一角を活用して小規模に醸造していますが、今後は施設内に新たな設備を増築し、生産量や規格を拡大していきたいとのこと。多様なニーズに応えていく姿勢に、草野氏のチャレンジ精神がよく表れていました。これからの展開が本当に楽しみです!!いつか、信濃屋でも草野氏のビールを取り扱える日が来ることを、心から願っています♪



さいごに…
今回の出張では、ワイナリーだけでなく日本酒蔵も訪れることができ、新たな学びと気づきに満ちた、本当に有意義な時間となりました。造るお酒の種類は異なっても、その土地で出会った風土に根ざした酒造りやワイン造り、ブドウ栽培の哲学には共通して、伝統や継承、そして「紡いでいくこと」への深い想いが息づいていました。
香りや味わいだけでは感じきれない、人の想いや土地の記憶に、実際にその場に足を運んだからこそ触れることができた、そんな感覚を体験できたことが、一番の収穫となりました♪
最後に、この素晴らしい時間をくださった笹祝酒造、鶴亀酒造、そしてカーヴドッチの皆様に心より感謝申し上げます。いつかカーヴドッチ、泊まってみたいです…(笑)