Shinanoya food & liquor

ウィスキー・ハードリカー・ワイン・こだわりの食品の情報をお届けします。

食の探求セミナー「八丁味噌」@広報 井上

2025.01.14

今回のブログ担当者は…?

皆さん、こんにちは!信濃屋広報の井上です。
本日は、caskに併設しているレストラン「W」にて、昨年(2024年)11月30日に開催された食の探求セミナー「八丁味噌」についてお話しします。なんと、八丁味噌を造り続けるカクキューさんは、今年で創業380年(since1645 正保二年)を迎えるそうです!セミナーでは、日本の歴史やテロワールが深く関わる八丁味噌の魅力をたっぷり学び、とても興味深い時間を過ごしました。この記事を通じて、少しでも八丁味噌に興味を持っていただけたら嬉しいです。ご参加いただけなかった方も、この内容を読めばセミナーの雰囲気を味わえるかもしれません。ぜひ最後までお楽しみください!

食の探求セミナーについて

食の探求セミナーとは、学びと発見を通じて食べることに向き合い食の本質を知っていただく場としてスタートしたイベントです。信濃屋がその道のプロフェッショナルをお迎えしご講演いただきます。その後、講演で取り上げられた食材を使った特別なランチコースをお楽しみいただくという内容です。毎回定員50名様のお席は満席で、大変ご好評頂いております。

野村 健治氏について

今回セミナーの講師を務めてくださったのは、合資会社八丁味噌 企画室 兼 品質管理部長の野村健治さんです。


大学時代の論文で味噌をテーマに取り上げたことをきっかけにこの世界に入り、現在は八丁味噌の品質管理を担当されています。
さらに、カクキューブランドや商標管理を担う企画室も兼務し、多方面でご活躍されています。

カクキュー八丁味噌を使った料理紹介

今回の料理に合わせたタレは、全部で3種類。あっさりした料理からこってりした料理まで、お好みに応じて選んでいただける内容です。

(左)信濃屋オリジナル木桶醤油ポン酢

(中)八丁味噌+弓削多醤油+オリーブオイル

(右)八丁味噌パウダー

それぞれの風味が料理にマッチし、楽しみ方の幅を広げてくれました!

  1. 1. Welcome Drink — あるけっ茶

    黒麹菌と日本酒の発酵技術を用いて作られた有機栽培の発酵茶。発酵茶自体は腸活やダイエットサポートなどに効果的ですが、このお茶の特徴は何といってもその飲みやすさ!クセがないので、どんな料理にも合わせやすいこと、味噌とも発酵同士という点が今回選定された理由となっています。

  2. 2. Starter — 鯵のタタキ/ブルスケッタ 北海道アグリシステムより”十勝”パン

    鯵のタタキの新鮮で濃厚な旨味にブルスケッタのカリッと香ばしい食感が加わり、味と食感のバランスが絶妙です。信濃屋オリジナル「木桶醤油と木桶酢のゆずポン酢」が全体を引き締め、爽やかな酸味と深いコクが鯵の風味をさらに引き立てていました。

  3. 3. Vegetable — 季節野菜のグリル

    八丁味噌をベースにした弓削多醤油とオリーブオイルのタレをつけていただきました。和と洋のエッセンスが融合したソースが、野菜の美味しさを引き出しています。どの野菜もタレとの相性が良く、一皿でさまざまな味覚のハーモニーを楽しめる一品です。

  4. 4. Main — 恋する豚*のロティー 八丁味噌のヴァンブランソース

    恋する豚*とは千葉県香取市に拠点を置く「株式会社恋する豚研究所」が展開する豚肉ブランド。ジューシーで柔らかな肉質が感じられ、上品なローストの香りが口いっぱいに広がります。ヴァンブラン(白ワインソース)の軽やかな酸味と香りに、八丁味噌特有の旨味が加わることで、和洋が見事に融合した味わいが完成していました。

  5. 5. Pasta — 八丁味噌とサーモンのクリームソース

    濃厚なクリームソースに、八丁味噌の独特な深みとコクが絡み合い、「これぞ和洋折衷!」と思える味わいでした。

  6. 6. Dessert — 味噌ティラミス

    バニラアイスクリームに「八丁味噌のパウダー」を振りかけたもの。甘味とコクが増し、不思議と塩キャラメルのような風味が感じられました。ほんのひと手間で楽しめる、ちょっと特別なデザートに仕上がります。

八丁味噌の学びと発見

八丁味噌の特徴

八丁味噌は「赤みそ」と呼ばれますが、実際はほとんど黒に近い色をしています。長い熟成期間を経て生成される茶褐色の物質「メラノイジン」を多く含んでいるためです。メラノイジンには抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する働きがあります。非常に硬く、味噌の中でも八丁味噌は最も水分含有量が低い種類とされています。

八丁味噌の由来

そもそもなぜ「八丁味噌」と呼ばれているのでしょうか?カクキューの創業は江戸時代初期ですが、そのルーツは戦国時代にまで遡ります。今川義元の家臣であった早川新六郎勝久が、桶狭間の戦い(永禄3年・1560年)で今川が敗北した後、武士を辞め岡崎の寺で味噌造りを学びました。

その後、彼の子孫が岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある八丁村(現在の愛知県岡崎市八丁町)に移住し、正保2年(1645年)に味噌造りを本格的に始めました。この味噌はやがて地名にちなんで「八丁味噌」と呼ばれるようになったからだそうです。

矢作川と八丁味噌のテロワール:土地が生んだ唯一無二の味わい

八丁村の近くに矢作川があったことは、八丁味噌作りにとって多くのメリットがありました。矢作川は良質な水を提供し、味噌の品質向上に役立ったほか、人や物資が集まりやすくなり、八丁味噌作りが地域の産業として発展するきっかけになりました。矢作川を使うことで、他の地域にも八丁味噌を広めることができた一方で、矢作川や他の川に囲まれた八丁村は高温多湿な土地であったため、食材が傷みやすい環境でした。この課題を克服するため、仕込み水を極限まで少なくするなど工夫が必要で、その結果八丁味噌特有の硬さが生まれたのです。

保存性を高めるため、水分量を減らす必要があった八丁味噌は、天然の川石を職人の手で山のように積み上げて重石とします。そして、この八丁町(旧・八丁村)の気候と風土の中で、二夏二冬(2年以上)の歳月をかけて天然醸造でじっくり熟成されます。

その味わいは、大豆のうま味を凝縮した濃厚なコクに加え、少々の酸味や渋味が絶妙に絡み合う独特な風味が特徴です。この味こそが、土地の気候風土=テロワールと職人の技が生んだ逸品といえるのだと思います。

※八丁味噌はその保存性の高さから南極観測隊、ヒマラヤやマナスル登山隊の携行食品として使用されたそうです

実は、味噌作りの職人だけでなく、「石積み」の職人がいることをご存知でしょうか?

石積み職人は、地震などの衝撃でも崩れないように、ひとつひとつ石を積み上げていきます。その技術を習得し、一人前になるには、なんと10年もの修行が必要だそうです!

味噌作りの現場では、豆麹と塩水を混ぜ、木桶に約6tの味噌を仕込みます。その上に、職人が手作業で天然の川石を円錐状に積み上げます。その量は約3t、石の数にしておよそ350個にも及びます。熟練の技と丁寧な作業によって、味噌が適切に発酵する環境が整えられるのです。

八丁味噌パウダーの魅力

伝統的な製法を守りつつ、フリーズドライ製法でパウダー状に加工された八丁味噌があります。

手軽に使える形になったことで、さまざまな料理に新しい楽しみ方が広がりました。

2gずつ小袋に入ったものもありますので、是非お試しください!

さいごに・・・

信濃屋では「食・酒の探求セミナー」を cask / W TORANOMON にて定期的に開催しています。ご案内は信濃屋コーポレートサイト内のニュース・イベント情報にてご確認いただけます。セミナー開催中、お食事と共に気になるワインをセラーから自由にお選びいただき、BYOスタイルで気軽にお楽しみいただけます。気に入ったワインはそのまま購入も可能です。当イベントは一般の方から業界の方まで、どなたでもご参加いただけますのでご興味がありましたらご予約をお願い致します。皆様のご参加を心よりお待ちしています。

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