Shinanoya food & liquor

ウィスキー・ハードリカー・ワイン・こだわりの食品の情報をお届けします。

食の探求セミナー特別編「自然が醸す新たな味わい」@ワイン館 窪田

2025.01.14

今回のブログ担当者は…?

皆様、はじめまして。ワイン館で食品と和酒(日本酒、焼酎)の担当をしている窪田です。今回は虎ノ門caskに併設している「レストランW」にて、12月14日(土)に開催した食の探求セミナー特別編、パタゴニアプロビジョンズ2024年自然酒コレクションの発売(12月11日より発売)を記念した、学びと発見のイベント、「自然が醸す日本酒」についてご紹介します。

食の探求セミナーについて

食の探求セミナーとは、学びと発見を通じて食べることに向き合い食の本質を知っていただく場としてスタートしたイベントです。信濃屋がその道のプロフェッショナルをお迎えしご講演いただきます。その後、講演で取り上げられた食材を使った特別なランチコースをお楽しみいただくという内容です。毎回定員50名様のお席は満席で、大変ご好評頂いております。

スピーカープロフィール

仁井田穏彦

福島県郡山市にある創業1711年の酒蔵「仁井田本家」の18代目蔵元であり杜氏。いち早く全量を無農薬無肥料で栽培した酒米を使用し、生酛(きもと)仕込みの酒造りを実践し、自社田で酒米の無農薬無肥料栽培にも取り組んでいる。

寺田優

千葉で350年続く蔵元「寺田本家」24代目当主兼杜氏。千葉県一小さな町・神崎を、発酵の力で元気にすべく、「こうざき発酵の里協議会」の代表世話人を務めるなど多方面で活躍中。

近藤勝宏

パタゴニア日本支社マーケティング部門のマネージャー等を経て、パタゴニアプロビジョンズディレクター。日頃からサーフィンやスノーボードなどを愛好し自然と親しみながら、自然に則した農法による米作りや農業に挑戦し、より環境負荷の少ないライフスタイルを探求している。

岩崎忠之

東京農業大学で栄養学を学び、新卒で「信濃屋」に入社。現場責任者・店舗責任者を経て現在は商品部部長。商品開発、商品設計、MDなどを行う。素材の味を生かして日本の伝統を守り伝え、ストーリー性のある製品開発を大切にしている。

パタゴニアと信濃屋、環境への想いでつながる日本酒

そもそも、なぜアウトドアウェアを販売しているパタゴニアが日本酒を販売することになったのでしょうか?その背景には、パタゴニアが推進する「環境再生型農業*」があります。

日本人の主食である「お米」を自然の生態系を壊さず、土壌を再生する方法で作り、さらに付加価値を加えて提供できる方法を模索した結果、「日本酒」にたどり着いたそうです。自然に寄り添い、伝統的な方法で作られた日本酒=「自然酒」の味がすごく良かったことも決め手になったといいます。

しかし、どんなに良いものを作っても、それを伝える場がなければ広めることはできません。そこで、長年木桶文化を守り続けてきた信濃屋が、パタゴニアのメッセージに共感し、パートナーとして共に活動することになりました。

*環境再生型農業: 農地の土壌を健康に保つだけでなく、土壌を修復・改善しながら自然環境の回復を目指す農業

「自然酒」とは

両酒蔵の共通点は「木桶仕込み」と「生酛(きもと)造り」です。とても手間のかかる酒の造り方で、自然の乳酸菌の力で雑菌を排除し、酵母が活動しやすい状態をつくり、アルコール発酵を促進。山卸しという米をすり潰す作業(機械は使わないのでとても体力を使う)を行う伝統的な醸造方法です。できるだけ米を削らずに、微生物の力で米の旨味を最大限に引き出した酒造りが「自然酒」になります。

寺田本家さんは酛摺唄を唄いながら、菌達と響きあいながら、仁井田本家さんは菌の気分や元気に任せて造りこまない酒造りをしているそうです!

食事と自然酒のマリアージュ

仁井田本家から「やまもり」 2023年と2024年、寺田本家から「繁土 ハンド」 2023年と2024年の飲み比べ。

リサイクル原料を20%使用したpatagoniaオリジナルおちょこでいただきます。

  • 「やまもり 2023」—落ち着いた、滑らかな口当たりで甘みのある味わい。
  • 「繁土 ハンド 2023」—落ち着きの中にも心地良い酸味がある。
  • 「やまもり 2024」—甘みを和らげるように新酒ならではのキレがあり辛口。
  • 「繁土 ハンド 2024」—酒母に酒母を入れた4段仕込みに挑戦。2023年より酸味がプラスされ飽きさせない味わい。
両蔵の麹の違い

2つの麹の香りはやや似ていますが、寺田本家さんは少し香ばしい感じ、仁井田本家さんは柔らかい雰囲気の香りでした。

▼冷菜プレート

中央:蓮根と寺田本家 酒粕のポタージュ 寺田本家 酒粕/豆乳/蓮根
①ムール貝の生春巻き 甘酒のヴィネグレット パタゴニア プロビジョンズ ムール貝・オリーブオイル漬 / 仁井田本家 甘酒
②白寿真鯛の刺身 100ZEN海の塩 / 霧島黒酢鰤の刺身 弓削多醤油に漬けた寺田本家 酒粕 / オーガニッククレソン
③セリのお浸し 本枯節
鹿児島指宿・山吉国澤百馬商店のTKG専用の鰹節/ 弓削多醤油 / 白出汁
④アグリシステムくろパン / パタゴニア プロビジョンズ ホワイト・アンチョビと豆腐のブルスケッタ

▼メインプレート

中央:ワイルド・ソッカイサーモン味噌豆乳クリームソース フジッリ(パタゴニア プロビジョンズワイルド・ソッカイサーモン / パタゴニア プロビジョンズオーガニックパスタフジッリ / 豆乳 / 蔵出し手詰め味噌)
⑤うふふのもと里芋のグラタン
寺田本家 うふふのもと / 里芋 / 豆乳チーズ
⑥米茄子の八丁味噌田楽 まるやの八丁味噌
⑦真鱈の塩麹焼き 酢屋亀本店生塩麹
⑧すり身団子 甘酒と酒粕ヨーグルトソース
仁井田本家 甘酒 / 寺田本家酒粕 / ミント /シャンカール野口さんのクミン

▼デザート

甘酒のパンナコッタ 豆乳 / 仁井田本家 甘酒 / 寒天 / クリーム / 豆乳

今回は、パタゴニアプロビジョンズでも販売している、世界初のリジェネラティブ・オーガニック認証を取得したパスタ、海洋生態系を保護し、混獲を最小限に抑え、最高の品質と風味を提供する技術で調達したワイルドサーモン、アンチョビ、ムール貝を使用。その他、信濃屋食品が日々お世話になっている食材や調味料を使った、2024年セミナーの集大成のようなプレートをレストランW様にご用意いただきました。

どの料理も素材の味がしっかりと生きており、身体に優しく健康的な仕上がりでした。両蔵の日本酒と合わせることで、素晴らしいマリアージュを体験することができました。

特に印象に残ったメニューは、①ムール貝の生春巻き 甘酒のヴィネグレット。 「繫土2024年」の生き生きとした酸味と相性抜群で、酸味同士のバランスが見事に取れていました。

⑧の酒粕とシャンカール野口さんのクミンのソース。まろやかさの中に控えめなクミンの風味が絶妙で、またつけて食べたくなるソースでした。自宅で再現してワインのおつまみにしたいと思わせる一品でした。

「やまもり」には里芋やクリームソースなど甘みのある食材と、「繫土」は酸味、塩味のあるものや貝類と、「八丁味噌」や「木桶醤油」はどちらの日本酒とも親和性が高く、それぞれの味わいを引き立てていました。

最後にいただいたデザートは「やまもり2023年」とのペアリングが素晴らしく、締めくくりにふさわしいものでした。

さいごに・・・

今回のセミナーは、パタゴニアプロビジョンズのメッセージに共感した寺田本家、仁井田本家、信濃屋食品が「発見」「学び」「美味しさ」をテーマに開催したものです。

パタゴニアプロビジョンズ ディレクターの近藤さんは、次のように語っていました。
「私たちがビジネスをするのは、まず自分たちの生活を成り立たせるためです。しかし、その生活を支える基盤には、地球が健康であることが欠かせません。土は食べ物を生み出す大切な源であり、地球が元気でいるためには、土を健やかに保ち、持続可能な方法で作物を育てていく必要があります。私たちが楽しく飲み、食べるその背景には、食材を生み出す環境や、それを支える生産者の努力があります。その全てが調和することで、結果として地球環境に良い循環を生み出すことができるのではないでしょうか。」と。

今回、2つの蔵元さんとコラボレーションすることで、日本酒に対する固定概念が変わり、自由に飲んで美味しいのが『自然酒』だと気づいたそうです。

日本の「伝統的な酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになった、ということもあり、これからも日本酒の素晴らしさを売場で表現しながら、食文化の魅力を皆様に伝えていきたいと思います。

信濃屋では「食・酒の探求セミナー」を cask / W TORANOMON にて定期的に開催しています。ご案内は信濃屋コーポレートサイト内のニュース・イベント情報にてご確認いただけます。セミナー開催中、お食事と共に気になるワインをセラーから自由にお選びいただき、BYOスタイルで気軽にお楽しみいただけます。気に入ったワインはそのまま購入も可能です。当イベントは一般の方から業界の方まで、どなたでもご参加いただけますのでご興味がありましたらご予約をお願い致します。皆様のご参加を心よりお待ちしています。

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