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ブルゴーニュで最大級のドメーヌのひとつ「ブシャール・ペール・エ・フィス」@ワイン館 小林

2025.12.07

今回のブログ担当は

みなさん、こんにちは。ワイン館の小林が担当させていただきます。先日、ブルゴーニュ最大級ドメーヌのひとつである「ブシャール・ペール・エ・フィス」のセミナーを受ける機会を頂きましたので、ご紹介いたします!

ブルゴーニュの希少性

皆様もご存知のように、ブルゴーニュワインは価格高騰も激しく、希少な存在です。どれくらい希少かというと、世界のワイン生産量のうち0.5%、フランスのブドウ畑のうち4.3%しかブルゴーニュワインはありません!生産量は、ボルドー(5億7百万本)やシャンパーニュ(3億1千4百万本)と比べても2億1百万本と、いかに少ないのが分かります。

ブルゴーニュワインの中でも、グラン・クリュは全生産量の1.3%、プルミエ・クリュは全生産量の9.3%しかありませんが、ブシャールのワインはグラン・クリュとプルミエ・クリュが大半を占めているとのことです。

大事な6つのポイント

ブシャール・ペール・エ・フィス」では大事にしているポイントが6つあります。

  • Climate (クリマ)
  • Topography (地形・地質)
  • Labour (人+畑仕事)
  • Nature (自然)
  • Soli (土壌)
  • Vine (ブドウ)

ブシャールはとてもテロワールを大事にしています。テロワールと言っても土壌だけを指すのではなく、以上6つの大事なポイントすべてを合わせたテロワールを大事にしているのです。

300年の歴史

ブシャールは非常に長い歴史を持っています。ここで簡略的にご紹介します。

  • 1731年:ワイナリー設立

ミシェル・ブシャールによって設立。ブルゴーニュに数ある生産者の中でも、有数の歴史を誇るメゾンの一つです。

  • 1775年:自社畑「ヴォルネイ・カイユレ」

ミシェル・ブシャールは元々ブルゴーニュの人ではなかったそうですが、18世紀にワイン業を本格化させると、ヴォルネイの銘醸畑カイユレを最初に取得し、後にボーヌを本拠地としてワイナリーを開業しました。

  • 1791年:初のフラッグシップ

ドメーヌのフラッグシップ「ボーヌ グレーヴ・ヴィーニュ・ド・ランファンジェズ」を取得。別名は「幼子イエスのブドウ畑」です。こちらは、カルメル派の修道女が、ルイ14世の誕生を予言したことにより寄進された畑です。生産祝や、誕生日のお祝いに贈られることでも有名です。

  • 1820年:改装

シャトー・ド・ボーヌを取得し、本社と熟成庫を改装しました。

  • 1995年:アンリオ傘下へ

今まではブシャールが自身で経営を行っていましたが、シャンパーニュの名門アンリオ家の経営となりました。アンリオは品質向上にも貢献し、名高いテロワールのエリアにも畑を買い足しました。

  • 2005年:サヴィニー・レ・ボーヌに新しい醸造所(サン・ヴァンサン醸造所)を稼働

アンリオが莫大な資金で建設した醸造所です。それまでは醸造設備が分散していたため、ワインの品質にバラつきが生じていましたが、集約されたことで品質が安定し、向上しました。

  • 2022年:アルテミスグループ傘下へ

シャトー・ラトゥールやシャトー・グリエ、シャンパーニュのジャクソンなどを所有するアルテミスグループにオーナーが移り、今に至ります。

ワインが出来るまで

〈畑〉

畑は98.7haと大きな面積を所有しています。111区画あり、43銘柄(アペラシオン)、さらに77クリマと細かく分かれ、大きな面積の中で大量生産しているのではなく、細分化して管理しているのが特徴です。

2009年に自社畑での有機栽培を開始。フランス政府認証のHVE農法の最高レベルであるLevel 3を取得。2025年に自社畑の100%を有機栽培にて開始しており、2026年の収穫で100%全量完了となる見通しです。

〈収穫〉

日々のテイスティングにより、最適なタイミングで収穫。手作業にこだわっており、全て手摘みで収穫し、ブドウがつぶれないように13Kgの小型バスケットを使用。大型トラックで運ぶと荷下ろし時間が掛かってしまうため、20台ほど軽トラックを借り、収穫から2時間以内に素早く醸造施設へ運ばれます。

〈醸造〉

厳格な選果をし、区画ごとに最良のブドウだけを残し、テロワールの独自性を保つために区画ごとの醸造を実施しています。ボランティアは募らず、ドメーヌを良く知るチームで行っています。収穫は営業から経理担当まで手伝い、選果からの作業は社員と社員の家族だけで行う徹底ぶりです。

〈熟成庫〉

12 – 18ヶ月と熟成期間を長くし、オーク樽を使用しています。新樽の使用を制限しており、白は15%、赤はグラン・クリュでも45%までと控えています。白ワインはステンレスタンクで清澄。発酵・熟成は樽を使用。その後、小樽から大樽に移し替えブレンド後は半年で液体をなじませ瓶詰となります。

赤ワインは木の発酵槽とステンレスの発酵槽を併用しています。果実がしっかりして長期の醸しに耐えられるヴィンテージは木製、酸化しやすいヴィンテージはステンレスタンクを使用しています。その後、セラーで熟成。ボーヌにある歴史的な地下要塞は厚さ7mの壁があるので、理想的な湿度と温度を保ち、振動も遮断しています。熟成庫には飲み頃を迎えるヴィンテージもあり、古酒をたびたびリリースしています。

テイスティング

今回のセミナーで、5種類テイスティングさせて頂きましたので、簡単に感想を書かせて頂きます!

  • ボーヌ クロ・ド・ラ・ムース 2022

こちらはドメーヌのモノポールであるクロ・ド・ラムースです。丘の中腹部の下に位置する畑で、流れてきた粘土質により乾きにくく、水分ストレスのない土壌になっています。2022年は最新ヴィンテージで、収穫まで気候が安定していたためグレートヴィンテージ!果実味主体の香りと味わいで、クロ・ド・ラ・ムースの特徴である果実のフレッシュさが印象的です。少し若さのあるワインで、すぐに飲むなら抜栓後時間を開けるかデキャンタをお勧めします。20年の熟成のポテンシャルを持っています。

  • ボーヌ グレーヴ・ヴィーニュ・ド・ランファン・ジェズュ 2022

ブログ前半にも登場した別名「幼子イエスのブドウ畑」。ラベルにも表現されています。傾斜のきつい中腹に位置しているため水はけがよく、砂利質土壌です。先ほどのクロ・ド・ラ・ムースとは同じエリアの区画違いにもかかわらず、ワインの性格はまったく異なります。

果実味主体だったのに対し、こちらはとてもエレガント。スミレの花のようなアロマに、複雑味としなやかなタンニンがあり、とてもエレガントな味わいのワインです。

  • サヴィニー・レ・ボーヌ レ・ラヴィエール 2020

粘土石灰質で、涼しさを求めてブドウの根が巻き付く傾向にあり、ラヴィエールの由来にもなっている「Lave(ラーヴ)」平たい石が存在しており、ミネラル感を出すと言われています。(畑の周りを囲う石材としても利用されています)南向きで日照量も多いですが、渓谷に位置することと、土壌の性質によって涼しさを保たれています。

2020年ヴィンテージは暑さで凝縮した力強いワインです。色は黒みがあり、リリース時は更に濃く、ドメーヌのスタッフですらブラインドではローヌと間違えるほどだったとか…少しスパイシーさがあり、酸やタンニンがしっかりある骨格のあるワインですが、力強さの中にエレガンスもあります。少し閉じたヴィンテージでもあり、今飲んで楽しいというよりは10年寝かせて飲みたいワインです。

  • ヴォルネイ カイユレ・アンシェンヌ・キュヴェ・カルノ 2020

名前の由来は、アンシェンヌ(かつての)キュヴェ(ワイン畑)カルノ(先代の畑の所有者)です。地元の貴族であり政治家でもあった不動産鑑定士のカルノから、嫁入り道具ならぬ嫁入り畑として1775年にもたらされた最初のブドウ畑です。

丘の中央部に近く素晴らしい日照条件を誇る畑で、石灰質ですが手のひらよりも小さい石が多くある場所です。アロマの豊かさや凝縮感があり、上質なタンニンがあるエレガントなワインです。厚みがあり、少しまだ硬さがあるワインです。

  • ル・コルトン 2020

コルトンはグラン・クリュでも大きいですが、その中でもブシャールのコルトンは少し高い位置にあります。前までは高い位置で熟しにくかったそうですが、今は温暖がポジティブに作用して丘の上は涼しく、丁度良い気候になりました。心地良いフレッシュな果実味と酸味があり、少しスパイシーさも感じます。こちらもまだ早く、熟成ポテンシャルを秘めるワインです。

飲み頃ワインについて

少しまだ若いワインが多く感じましたが、今おいしいワインは2017年、2021年です。ボディは軽く、身体に入りやすいピュアなワインで、今年飲むべきワインだと言われていました!逆に2018年と2020年はセラーで寝かせたいワイン。最近のヴィンテージはデキャンタした方がよく、大きなものではなく、細身のデキャンタを使用することをお勧めしておりました。

酸化防止剤について

近年、酸化防止剤無添加のワインも増えてきていますが、ドメーヌではSO2を必ず添加する考えを持っています。高額でもあるので、ボトルさや品質にブレがあってはいけないため、最低限のSO2を必ず添加しています。温暖化の影響がポジティブに作用しており、病害が減っている為、SO2を控える事は今までより容易になった傾向にあります。亜硫酸については、否定はしないものの使用はしないそうです。大量生産するワイナリーなどでは使用することがありますが、今はネゴシアンも辞め、丁寧に造る環境となったため亜硫酸は無くても大丈夫だそうです。

さいごに…

ブルゴーニュの中でも長い歴史をもつブシャールですが、ワイン館でも取り扱いのある生産者です。最後にワイン館でお得にご購入いただけるワインをご紹介いたします!

ムルソー 2022

リッチなワインですが、重たく粘性のある印象は無く、香りは白い花のフローラルなニュアンスとミネラルを思わせ、メゾンの求めるエレガントな味わいです。年末年始の1本として是非ワイン館でお買い求めください♪

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