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ワイナリー訪問記-アルザス出張編-@武蔵小山店 遠藤-

2023.04.22

今回のブログ担当者は…?

ごきげんよう。武蔵小山店ワイン担当の遠藤です今回のブログはドイツ、フランス(アルザス)出張での回顧録になります。ドイツ(ProWein)での活動につきましては、横山バイヤーのブログをご覧いただければ幸いです。

海外に出かけるとなると大変なこと、充実した仕事、連続するトラブル、美味しい食事のひと時等々、色々あるものですが振り返ってみると良い出張になったのではないかなと思います。今後、入荷を予定している信濃屋直輸入ワインに是非ご期待ください。

今回のブログ内容はアルザス出張のお話です。ご覧いただければ嬉しく思います。

アルザスにて…

ドイツのケルン(宿泊地)から電車で移動。目的地はフランス、アルザスの都市ストラスブール。アルザス語で「街道の街」。その名の通り交通の要所。欧州評議会や欧州人権裁判所、またEU欧州議会の本会議場などもあり、EUにとっても重要な都市。ストラスブール大聖堂、中世の木組みの家々が残る非常に美しい街です。この素敵な街では2日間の滞在となりました。

1日目は、弊社直輸入の新規シャンパーニュ生産者【LEVEQUE DEHANE<今後入荷予定>】とのミーティング&一緒に夕食。2日目は、都市コルマールから南西へ約10kmのところにある長くから弊社にてお取引させていただいているDomaine Kuehn(キューン)Domaine Weinbach(ヴァインバック)の2つの蔵元を見学させていただきました。

Proweinでの仕事を終え、ストライキに怯えながらストラスブールに無事到着しました。予定では次の日に南へ約70kmのコルマールへの電車に乗る予定でしたが、ストライキで電車がないというトラブルに見舞われました。キューンのAurelie(オーレリー)さんが迎えに来てくれなかったらどうなっていたことでしょう。本当に親切にしていただきました。ありがとうございました。武蔵小山店ではキューンを推し続けることでしょう(笑)どこへ行ってもストライキには苦しめられました。

LEVEQUE DEHANEとのミーティング(信濃屋新規取り扱い未販売)

新しくお取引を始めたシャンパーニュの蔵元です。横山ワインバイヤーがこちらのワインをテイスティングした時に、その質の高さに驚きすぐに連絡を取ったとのことでした。

4代目当主がエリックさん、ナディさん、5代目が娘エレーナさん、マリーンさんの家族経営でランスから北西に45km、A Brazy-Sur-Marne(ブリ=シュル=マルヌ)にあるシャンパーニュの蔵元です。

ワインの造りは科学的なものを排したナチュラルな造りで、34haもの畑を所有しています。ドメーヌの近くの川を挟んで、右側にあるのがADRET、左側にあるのがUBACという区画になります。この二つの区画を飲み比べてみると明確なテロワールの違いを感じさせられます。ADRETは日当たりの良い土地で、味わいに果実味とボリュームがあり、UBACはチョーキで硬質な構造をしっかり感じられ、余韻が長い作品になっていました。

またシャンパーニュの話をしていく中で、エリックさんからドザージュ(補糖)について興味深いお話がありました。近年はドザージュについて気にする消費者が増えており、それが少ない方が好まれる傾向(スペインとイタリアは除く)があるとのことでBrut Nature(ブリュット・ナチュール)などが好まれることが多いとのことです。フランスでは、半世紀前はドゥミ・セック(半甘口)が好まれていたという話ですので、ある種の時代(好み)の移り変わりなのかもしれません。

実際に日本でもドザージュについて訊かれることもあり、シャンパーニュ(スパークリングワイン)を選ぶにあたって一つの検討する指標になりつつある気がしています。LEVEQUE-DEHANEでは、ドザージュには砂糖とブドウジュースを使っているという話でした。興味深いお話を聴きながら、試飲へと移ります。

・ADRET NV BRUT ZERO

セパージュはピノ・ムニエ30%、ピノ・ノワール20%、シャルドネ30%。ブリュット・ゼロですが、補糖は1g/ℓ。エリックさん曰く、この1g/ℓがとても大切でこれがシャンパーニュにバランスをもたらすのだというお話をしてくれました。ドザージュの話の流れから、より話に理解が深まります。白い花、花梨、マルメロ(セイヨウカリン)系の果実味と明るい酸味とのバランスを上手く調整してくれるのがドザージュの量。ブドウの品質の高さを感じられ、辛口な仕上がりではあるけれど、一本通して飲んでも飽きない仕上がりです。

・ADRET EXTRA BRUT

補糖は4g/ℓ。個人的にはこちらが好み(1本通して飲むことを考えることが多いので)ですが、恐らく大きく意見が分かれるところでしょう。これは求めるシチュエーションや料理とも関係してくるかと思います。BRUT ZERO(前述)よりもより口当たりが柔らかく、酸味を和らげるような印象を感じさせます。パリにあるレストランなどでもオンリストされているとのことです。

・ADRET BRUT

補糖は7g/ℓ。この3種類を通して感じられるドザージュ量での印象の違いは非常に面白く、またADRETのテロワールの特徴、共通項を見いだせることができます。

特にBRUT ZEROとの比較試飲をすれば、あまりシャンパーニュを飲まない方でもこのお酒の面白さに気づくことができるのではないでしょうか。白い花やマルメロ(セイヨウカリン)系果実のボリューム感の違いや酸味の伸び方やバランスなどに明確な違いがあり、それぞれに良さを感じられると思います。

・ADRET MILLESIME 2015

 熟成によって味わい、香りに奥行きと複雑さが増していきます。熟成由来の香ばしさに思わずうっとりします。アプリコットなどの果実と酸味と蜜っぽさのバランスが絶妙でした。

・UBAC BLANC DE BLANCS

シャルドネの単一品種。石灰、ライムストーン由来の構造が強くて余韻が長く、重心がやや上向きの明るさがあります。ADRETと飲み比べるとその性格がまるで違うのは非常に面白さを感じていただけると思います。

ワインを飲んだ時に、横山ワインバイヤーが「美味しいでしょ」と言ってきたのも印象深いところです。よくこんなハイレベルな生産者を見つけてきたものだと驚かされます。かなり質が高い。そして、日本でご紹介する価格に恐らく皆さん相当驚くと思います。この質に対してかなりリーズナブルです。期待してお待ちください。

Domaine Kuehn-ドメーヌ・キューン-(信濃屋実店舗/ネット店で販売中)

1678年から続くアルザスのアムシュウィラール村の生産者です。信濃屋としても長くお付き合いのある蔵元ですが、実際に現地に行くことは今回が初めて。Aurelie(オーレリー)さんに生産から瓶詰までの生産ラインを案内していただきました。その後、初めてのドメーヌへ。

地下セラーは400年以上前からそのまま使用されており、そこで熟成されている大樽もまた400年以上使用されていることは驚かされます。それほどに歴史のあるドメーヌなのです。

400年以上も大樽として使うことはできるのかというと当然樽の香りなどはもう付くことはないのですが、程良い空気のやり取りができる有能な容器として、現役で使用されています。保管は常に虫などを防ぐ特別なオイルを外側に塗り保管されています。

50年ほど前からステンレスタンクが流行り出して、キューン以外にも数百年もの古樽を使用していたドメーヌは他にも多くあったのですが、ステンレスタンクに切り替えてしまうところがあって、歴史ある古樽を解体してしまうところも多かったとか。このような話を聞くと、伝統と革新について問われているかのように感じます。キューンでは伝統を守り、ステンレスタンクも導入していったとのことでした。

1945年、第二次世界大戦の時にはアルザスはドイツ領。イギリス、フランスなどの多国籍軍からの空襲、空爆の時には、地下セラーに避難したということでした。実際に地下セラーに入ってみると、上着を羽織っていてもその場に留まることも嫌なくらいかなり寒い。その空間で1か月間くらい避難していたようです。人々はこの地下セラーのことhell(地獄)と呼んだそうです。空襲による警報が鳴った時、hellに行こうと言って、その言葉とは裏腹に戦時中であっても、hellにて人々は楽しくいい時間を過ごしていたという話でした。

現在でも地下セラーで音楽や美術を愉しんだりするイベントなども開催されているそうです。ラベルも今後、この地下セラーの絵が描かれたものになり、伝統的、歴史的背景の意味合いも表現していくとのことです。実はキューンは担い手が途絶えて、売りに出されたのですが、人が変わっても歴史や伝統を引き継がれて今も素晴らしいワインを造っています。気になる方は信濃屋で販売していますので、是非試してみてください。

ドメーヌ・キューンの商品一覧

Domaine Weinbach-ドメーヌ・ヴァインバック-(信濃屋実店舗にて販売中)

ドメーヌ・ヴァインバックに着くとエディさんが迎えてくれました。車で畑を案内してくれましたが、四駆の自動車でなければ登れないであろう急斜面を登っていき、畑を案内してくれました。ヴァインバックの作品は色々と国内で飲むことがあり、その質の高さを感じていたところですが、まず現地に行って思うのが、とっても良い畑・良い区画を所有しているのだなという実感が肌で伝わってきます。写真をご覧いただけると急斜面の畑を少し感じられると思います。

非常に興味深いものでは、リースリングの苗木にシラーやグルナッシュを接ぎ木しているという畑も見せてくれました。これには驚きました。ブルゴーニュでも南の葡萄を栽培するという話は聴いていましたが、まさかアルザスでもそのようなことが行われているとは。温暖化の波はアルザスにも来ており、そのような試みも行われているようです。

またブドウ樹々の幅も狭くすることで、ブドウの収量を下げて収穫しています。これにより飲めば実感できるあの濃密で充実感と深みのある果実味があるヴァインバックらしいワインが生まれます。ヴァインバックの作品を飲んだ時に低収量からもたらされる凝縮感、濃密な味わいはどこから来るのか。そんな理由に触れていくことや実際に畑を見てみるとよりイメージが明るいものになっていく感覚がありました。

開墾している畑なども一通り案内していただき、ドメーヌに戻ってセラーも見学させていただきました。クリーンな新樽や大樽があり、ここでワインが造られて世界中へワインが出ていきます。

実際に試飲をさせていただきました。

一通り試飲をさせていただき、区画ごとに異なる性格がありテロワールを掴めたというのはすごく良い経験値になりました。

中でも初めての経験だったのは、ピノ・ノワール2種類【La Calline du Chateau 2020】【Altenboug 2020】寡聞にして知らないところですが、日本では見たことがありませんでした。白同様にヴァインバックらしい果実味の濃密さがあり、アルザスのピノ・ノワールらしく、引き締まったタンニンを感じます。Altenbourgには他のこの区画同様に硬質な構造を感じ取れます。まさにこの構造こそがワインの良さなのだと主張するが如くで、魅了される瞬間でした。贅沢な経験をさせていただきました。

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終わりに…

一番印象深く愉しかったことを振り返ってみると食事のシーンが出てきます。

LEVEQUE DEHANEの皆さんと夕食を食べた時の古典的料理であるシュークルート※1とアルザス特級リースリングの合わせは完璧で、思い出すだけでも涎が出てきます。

※1 シュークルートとは…ドイツではザワークラウトと呼ばれ、塩漬けキャベツを乳酸発酵させて作るアルザスの伝統食品

キューンに行った時、ランチにトップ・キュヴェである特級ケフェルコフ・リースリングを地元の人々と賑わっているレストランで飲みましたが、その畑を見て、地元の料理を食べて、地元のワインを飲むという何よりも贅沢なひと時はとても満ち足りたものでした。改めて食べることの愉しさをしみじみと感じられました。

アルザスの滞在は2日間と短い間でしたが、実際はここにも書ききれてないくらい新しい発見や街の美しさ、様々な人々、郷土料理の素晴らしさなど色々な出会いにも恵まれました。そして、ストラスブールの街を少し散歩しましたが、歴史ある街並み、その美しさには心を奪われました。素晴らしい機会でした。ありがとうございました。

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