Shinanoya food & liquor

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収穫体験レポート〜桔梗ヶ原ワイナリー〜@武蔵小山店 遠藤

2023.11.03

今回のブログ担当者は…?

こんにちは。武蔵小山店の遠藤です

何を書こうかと思っていたら、10月の出張に同行させていただけることになりました。せっかくの機会なので、今回の出張をテーマに作りました。

この出張の目的は、長野県塩尻市にある『シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリー』で葡萄収穫(ボランティア)と桔梗ヶ原ワイナリー見学です。暇つぶしがてらお読みいただけると幸いです。

弾丸出張!シャトー メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリーへ

今回の出張はワインバイヤー 横山新宿店 間宮ワイン館 阿部そして、私の4人で弾丸出張となりました。行程は以下の通りです。

2023年10月12日(木)6時30分新宿駅に集合。

JR特急あずさに乗り塩尻駅へ ⇒ 桔梗ヶ原ワイナリーに到着 ⇒ 片丘ヴィンヤードで収穫作業

⇒ 桔梗ヶ原ワイナリー見学 ⇒ ワインテイスティング ⇒ 一同、新宿へ ⇒ 解散

いざ葡萄収穫!

  • 桔梗ヶ原ワイナリーについて

2018年秋にオープンした桔梗ヶ原ワイナリーは、”桔梗ヶ原”という素晴らしい土地の個性を最大限に活かすため、高品質な赤ワイン造りに特化したガレージワイナリーです。

また桔梗ヶ原地区では、1976年からメルロの栽培に挑戦しています。標高は740m。土壌は砂礫質。現在では、メルロとカベルネ・フランを栽培しています。

桔梗ヶ原といえば、シャトー・メルシャン『桔梗ヶ原メルロ シグナチャー』が最も有名です。映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に〜』も公開されましたね。

『桔梗ヶ原メルロ』その中から特別な区画を選定し、更に樽セレクションにより厳選した『桔梗ヶ原メルロ シグナチャー』。メルロ単一の日本赤ワインの最高峰と言って過言ではない作品がここから生み出されます。

  • 2023年ヴィンテージについて

例年に比べ、4月以降とても暖かい日が続き、降雨の少ない乾燥した夏が過ぎ10月を迎えました。天候に恵まれたことで、葡萄の成熟は例年より1週間以上早くなりました。

この熟度の高さは過去10年でもよく出来た葡萄で、葡萄によっては糖度24度になるくらい、アルコール度数も13.5%~になっていくのではないかというお話でした。(※糖度の上がり過ぎも難しさがあるとワイナリー長の高瀬さんは仰っていましたが、健全でとても良い葡萄が実ったのは間違いないと思います)。そのような成熟の具合から例年よりも1週間早い収穫になりました。収穫の期間は一ヶ月くらいで終えるとのことです。実際に葡萄を食べてみるとその質の高さに驚かされました。

  • 片丘ヴィンヤードについて

片丘ヴィンヤードは2016年から自社管理による葡萄収穫をスタートしました。現在は約14haの圃場、南内田と北熊井の2つの区画に分けて管理されています。

南内田では、メルロとカベルネ・フラン。北熊井ではメルロ。カベルネ・フラン、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールが栽培されています。標高約800m、年間降雨量は約1000~2000mm。日照量が豊富で比較的強い風が吹き抜け、西向きの斜面、風通しが良く石を多く含む礫質土です。細かい礫質土でより水はけの良い土壌です。メルロを実際に食べてみると包み込むような円熟感のある果実味、イメージとしてメルロらしいボリューム感、果肉感を感じられる優しいメルロでした。

メルロ
収穫後のメルロ

北熊井では南内田よりも強い風が吹き、その葡萄へのストレスからタンニンが強いメルロが生み出されます。これらをブレンドして出来上がるキュヴェが『桔梗ヶ原メルロ』になります。特別な区画を選定し、更に樽セレクションにより厳選したものが『桔梗ヶ原メルロ シグナチャー』になります。

北熊井土壌サンプル
南内田土壌サンプル

個人的な視点では、ワインを飲んで細やかなテロワールを感じる瞬間がとても愉しいので、この南内田と北熊井の差を感じたい!そういうキュヴェは造っていないのかと思ったら普通には販売していないとのことです。そう、普通には。

シャトー・メルシャン・プレステージ・パスポート※のプレミアムコースの中に入っています。特別な限定品です。「メルシャンさん、いい商売するなー(笑)」と冗談交じりに今回案内をしてくれた伊藤さんが仰っていたことには大いに笑わされました。

※シャトー・メルシャン・プレステージ・パスポートとは…詳細はこちら

実際に内容を見てみると、よりワインのことをより興味深く掘り下げていけるコースになっていけると思います。このコースを取れば、土地、葡萄、テロワール、人、醸造など一つのワインに関わる事柄に触れることができると感じています。実際に畑に足を運んでみて、ちょっと心が揺り動かされている今日この頃です。日本ワイン好きな方は是非に!(案件ではないです笑)

今回の収穫では、片丘ヴィンヤード 南内田でメルロの収穫を行いました。後から高瀬さんからお聞きしましたが、さらにその中でもとても良い区画のメルロだったようです。

伊藤さんから収穫の仕方やいい葡萄や病気になっている悪い葡萄(収穫しないもの)を教えていただき、収穫が始まりました。実際に葡萄に触れてみるとその重さにエネルギーが詰まったようでした。実りってなんかすごいな…。この一房一房が、たった一年に一度しかできないのだよなと当たり前のことを感じていました。

夢中になっているといつの間にお昼になっており、葡萄畑の中でご飯を食べます。素晴らしいひと時です。後半戦も集中して引き続き取り組み収穫作業を終えました。今回の収穫量は1.8トン。ワインのボトルに換算すれば約1,800本となりました。これらが醸造所に運ばれて最終的にはワインになります。

収穫の帰りにシャトー・メルシャンの伊藤さんから他のワイナリーとの技術交流や勉強会などがあることや、近くの塩尻志学館高校ではなんとワインが醸造できる高校(前身である農学校の時代に酒石酸をとるために果実酒類の免許が下りたという経緯がある)で、そのワイン(KIKYOワイン)は、お酒が飲めない高校生が造ったとは思えないくらいとても美味しいなど様々な興味深いお話をお聞きしました。ちなみに高校卒業後にシャトー・メルシャンに入社する方も何人かいるとのことです。

ワイナリー見学

その後、桔梗ヶ原ワイナリー見学しました。10月12日時点ではピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールの仕込みは終わっており、醸造所ではワイナリー長の高瀬さんがメルロの仕込みを行っていました。

丁度ルモンタージュ※を行っており、とても大切な作業中でした。

※ルモンタージュとは…果帽の下のワイン液をポンプで下から抜き取り上に戻し入れること。これにより果帽が下に沈み撹拌ができます。この過程の仕方や回数によりワインのエッセンス、ワインの色の付き方などが異なってくるようです。桔梗ヶ原ワイナリーでは、ルモンタージュを2回行うとのお話でした。

貯蔵室では今は使用されていない大樽や実際にワインを熟成中の新樽がずらりと並んでいました。こちらでは、記念撮影もさせていただきました。マスター・オブ・ワインたちのサインなどもありました。

最後に、ワインのテイスティングです!こちらを頂きました。

  • 片丘ヴィンヤード ピノ・グリ & ゲヴェルツトラミネール 2021

口に含んだ時の瑞々しさと透明感があるのに、ピノ・グリが複雑さを、ゲヴェルツトラミネールがライチなどのエキゾチックなアロマを与えてくれます。フレッシュ&フルーティーな良いワインです。

  • 片丘ヴィンヤード メルロ 樽選抜 2021

ブラックベリーなどの黒果実はえぐみもなく澄んでいるのに、しなやかなタンニンはワインにしっかりとした骨格を与えています。粘土質土壌らしい豊かな果実味と、しなやかな酒質は飲み口がスムースで引っかかるところがありません。新樽の香りが主張するところもあるので、赤身肉などと合わせることやもう少し時間を置くとそれぞれの特徴が溶け合い、より素晴らしい味わいになっていく予感。人の手が成せる業だなとしみじみ。

最後に…

実際に足を運んだ場所から生まれた生の葡萄メルロを食べてみてから、その土地の葡萄からできた(正確に言えば南内田以外のメルロも混ざっているが)メルロを飲むというのは、感慨深いものと純粋に深い学びがあります。優れた土地から生み出された葡萄に人の手が関わり、時間が経過して愉しまれる浪漫やワインのストーリーに少し触れたような気がしました。

確かにストーリーに味はしないのですが、その日の経験として過ごした時間が色づいていくような感覚です。基本的に売場に立つ私たちや横山バイヤーもワインには触れて、各々が真剣にテイスティングをして、選定して、お客様に伝えるように日々努力していると思います。ただ実際にワイン生産の現場に行き、畑仕事をして、その土地を感じてみると一層身が引き締まる思いになりました。

これで桔梗ヶ原ワイナリーでの一日が終わりました。

その後、塩尻駅まで軽い散歩&散策をして、伊藤さんから教えていただいた塩尻駅にある日本ワインが楽しめるお店に行ってきました。『アイマニ』さん、電車の待ち時間にちょっと飲めるという素敵なお店でした。

朝からハードな一日でしたが、稀有な経験をさせていただきました。改めてシャトー・メルシャン 桔梗ヶ原ワイナリーの皆さま、一緒に収穫したボランティアの皆さまありがとうございました!素晴らしい機会、時間を過ごすことができました。2023年のワインができた時、またお伺いさせていただけたらいいなと思います。

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