Shinanoya food & liquor

ウィスキー・ハードリカー・ワイン・こだわりの食品の情報をお届けします。

アルザスワイン会 at W TORANOMON@武蔵小山店 遠藤

2024.03.09

今回のブログ担当者は…?

こんにちは!武蔵小山店の遠藤です色々なワイン会に参加するようになり、交友の輪が広がった一年でした。今年はのびのびやっていこうと決めたのにも関わらず、今年に入ってから3月の段階で、すでにワイン会に参加、企画、プライベートでレストランにBYOするのが10回を遥かに超えていました。グラン・ヴァンだろうがそうでなかろうが、テーブルに置いたワインは全てテーブルワインに…一週間に1回のペース?のびのびできてないじゃん(笑)貯蓄はスリムどころか、身体はちょっぴり肥えた気がします。運動しなきゃ!

アルザスワイン会

今回は虎ノ門ヒルズにある新店caskの隣にあるWさんでワイン会を開催してきました。caskのワインをBYO(ワイン持ち込み)で気軽に楽しめます。caskでワインを持ち込んで抜栓料1本1500円(税込)で楽しめるというスタイルです。

個人的には今回が虎ノ門では初めてのWさんだったのもあり、実際に食事して愉しんでみたいという思いがあり開催してみました。

今回のワインはcaskのワイン担当に無理を言って用意しました。川上さんありがとうございました。テーマに悩みましたが、今回は主にアルザスワインの面白さとヴィンテージについての違いを感じてもらえるようなラインナップを心掛けました。

ワインリスト

  • キューン/クレマン・ダルザス・ブリュット 税込2,200

品種:オーセロワ

1675年から続く歴史ある生産者。15〜18ヶ月熟成の瓶熟。飲んでみてこの価格への満足度たるや。ドザージュ 13.2g/l 数字を見ると意外と残糖感あるように思わせますが、飲んでみると薄くて甘い、というのではなく、オーセロワらしいふくよかなマルメロ、花梨系の白などの控えめで品のあるアロマが立ち昇ります。ワイン識者の多い会でしたが、とてもお世話になっている方にこれいくらですか?とほぼブラインドでお聞きすると5,000円といただきました。確かにその満足感はあるやもしれません。瓶熟成の長さによる全体が練れてまとまっており、近年の低レベルの残糖度とは異なるスタイルゆえの豊かな香味の広がりはある種のリッチさも感じさせます。日本には未入荷ですが、キューンの泡の上級キュヴェの仕上がりはフランスの泡の中でも個人的にリーズナブルクレマンの中ではTOP5に余裕でランクインするくらい好みです。弊社バイヤーさま、いっぱい売るのでご検討ください。もちろん、このクレマン・ダルザスも武蔵小山店では最もリピートが多いクレマンです。

  • セピ・ランドマン/リースリング グラン・クリュ ツフィンコフェル[1983] 参考価格12,100

蔵出しリースリング古酒。伺ったストラスブールの星付きレストランでもオンリストされていました。熟成セピを含めた他のアルザス古酒を何十種類飲んでいて感じるのは熟成アルザスの熟れ方の妙を感じます。構造は液体に溶けていきつつ、派手なメイラードによる香ばしさは酒質に溶け込み、一つになっていく動態、全から一への収束は凡庸になるのではなく、溶けてゆく妙が一体となった姿をよく見かけます。そして、この作品もその通り良いものでした。リコルクして補酒したボトルですが、蔵出しで状態も良く、素材を活かした出汁系割烹などと合わせてみたい典型です。ボトルの形も均一でないのが見て取れます。毎回この時間経過の浪漫を感じさせます。今回は人数がいるのでデキャンタして均一にして提供。

撮影場所:W TORANOMON
W TORANOMON MENU
  • ジュリアン・クライン/エイシュガス ピノ・ノワール[2021] 武蔵小山店 店頭価格6,578

キンツハイム村の区画です。土壌は花崗岩土壌,低収量18hl/ha除梗も、酵母添加も、添加物も、清澄もなにもなし。SO2は瓶詰時に10g/lほど添加するのみ。

星の引力のような球体的構造の中心へと向かうメリハリはらしさ。これがはっきり感じられるのは、花崗岩土壌的な特徴、様々な要因によるテロワールを含めたワインの素晴らしさを感じさせます。ブルゴーニュなどの石灰質土壌である理想は、宇宙的拡大。火山性の理想は引力的収束。ストラクチャーにおいてあえて花崗岩土壌の作品を選んだのはそのような意図でした。その断片は感じられると思います。収量の低さも相まってこの凝縮感は流石です。彼の造りはマルサネのシルヴァン・パタイユと同じで樽も一緒とブルゴーニュのような装い、絶妙な樽化粧を纏ったアルザスワイン。中核にアルザスを感じるのが良さと思っています。SO2ごく少量。21‘らしいブラックベリー、カシスなどの赤黒系果実味は控えめ、青いタンニンとそのアクセント、2020年とは打って変わった年柄を感じさせます。口当たりは柔らかく、若いうちから楽しめるモダンなスタイルです。

  • ジュリアン・クライン/フランクシュタイン リースリング[2021] 武蔵小山店 店頭価格11,880

ダンバッハ・ラ・ヴィル村の特級フランクシュタイン。土壌は花崗岩土壌。25hl/haと低収量。個人的に誰かと飲みたかった作品。造りは他のキュヴェと同様。期待は裏切りません。グラスからアロマを取ると、その時点でこのワインの持つエネルギー、特級らしい構造の複雑さに気付くことでしょう。思わずうわぁ~と声が出ます。一口、飲み参加者を見るとご納得のご様子。ピュアで柔らかい酒質なのに構造は水晶が層になったように複雑で硬質なものを捉えられます。特級など優れたワインを飲む時に飲み頃を尋ねられる方もいらっしゃいますが、私や他の参加者の方も割と早めから飲む方がいいのではないかという意見が多かったかなと思います。こういうワインは1本通してゆっくり飲みたくなります。

試飲会の食事(生ハムサラミ)
グリル野菜
  • ドメーヌ・ヴァインバック/アルテンベルグ ピノ・ノワール[2020] 武蔵小山店 店頭価格16,280

2023年に蔵元でテイスティングしました。2023年に現行VTを飲んだ中でも5本の指に入る、優れて良いピノでした。リースリング、ゲヴェルツトラミネールなど色々飲みましたが20’は低収量からなるピノ・ノワールが年柄的にも合っていたのか特に素晴らしいと感じさせるものでした。ふくよかな赤果実に,ギリシャの神殿の石柱のように太く硬い構造にアルテンベルグの畑の素晴らしさが如実に出ています。畑を見ると分かりますが凄い急斜面です。温暖化の中で、シラーを接木するなど試みがあります。

今回、抜栓してみて、リーデルのブルゴーニュグラス(現地ではザルト ユニバーサル)だと赤果実の豊かさと樽由来のアロマがより官能的に表れて、飲めばこれがいかに優れたワインかとはっきりさせられます。この硬質で何層にもなるかのように続く構造の厚さと複雑さこそアルザス特級の素晴らしさのように思えます(ザルトだとより果実味の輪郭と酸味がはっきり表現されます)。とある参加者の方も口にした瞬間、自分と全く同じ反応をしていて嬉しかったです。熟成のポテンシャルが凄いですねという言葉も頂きました。全く同感です。これはまごうことなきグラン・ヴァン。アルザスワインのポテンシャルを少しでも感じていただきたかったので、嬉しい限りです。

  • プラーガー/リースリング シュタインリーグル フェーダーシュピール[2022](ブラインドテイスティング) 武蔵小山店 店頭価格5,500

ステンレスタンク熟成でクリーンさを引き出すオーストリアの大銘醸地ヴァッハウのトップ生産者の一人ヴァイセンキルヒェン村のプラーガー。石灰と大理石の土壌からなる快活さと幽玄さを秘めた作品。感度の高い方なら生産者当てゲームになるかもしれません(笑)ブラインドで出してみたのは、シンプルにアルザスとヴァッハウのリースリング比較という意図でしたが、ヴァッハウ某有名生産者まで出してくる方もいて流石でした。同じリースリングなので、白系果実の豊かさに冷涼さ、重心の高さもあるのですが、木樽を使わないゆえの透明感のある硬さのある酒質、鉱石のような硬質さが同居する様子。アルザスも対外土壌は複雑に過ぎるので、その都度、味わいと情報を確認しなければなりませんが、ストラクチャーの違いを感じられたのではないでしょうか。

コスパ凄い!

お料理今回は6,500円のコースを注文しました。特級を色々いれても一人あたり15,000円ほど。コースではなく、2人でもボトルを開けて、ワインを数百本あるセラーから選ぶことを楽しみ、様々なお料理とカジュアルに楽しめるようになっています。ワインを購入するにも十分楽しめるセラーになっていますので、虎ノ門ヒルズの近くにお寄りの際は是非、お気軽にいらしてみてください!このようなワイン会は勿論、グループで楽しく飲むにもぴったりなお店です。

おわりに…

尊敬するソムリエたち、業界人などと意見交換していてもアルザスワインをより詳細に理解しようとすると、特級や1級のそれぞれの差異や生産者などを抑えていこうとすると骨の折れるような難解さを秘めているように思えます。その土地のワインを飲み、風土や歴史、人々に触れることでその素晴らしさ、豊かさというものが広がっていきます。本音を溢すとはっきり全然アルザスワインを理解しているとは残念ながら全く言えないなというところ。ただ、ブルゴーニュシャンパーニュだけが特別ではない、様々な土地のフランスワインの豊かさを少しでもお届できればいいなと思った次第でした。

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