
サヴール クラブ会に呼ばれて@ワイン館 遠藤
目次
今回のブログ担当者は…?
こんにちは!ワイン館の遠藤ですワインは趣味と仕事の狭間にあって、このような仕事をしているとお客様やワインを通じてできた友人などからワイン会へのお誘いをいただく事が多々あります。今年に入ってからありがたいことに様々な方から二つ返事で快諾していたら気づけば月に8回ほどワイン会に参加していました。流石にハードでした(苦笑)。どの会も素晴らしい人、ワイン、食事で、毎回素敵な経験、時間を過ごすことができました。 今回の内容は仲良くさせていただいている友人(主催者)から相談を受けていた会でした。参加人数は7人で非常に良い時間を過ごすことができました。ワインの内容さながらペアリングにおいても非常に学びが多い会でしたので、フィードバックとしても今回はこの内容を取り上げてみました。
サヴール クラブとは…?
サヴール クラブはフランスの星付きレストランが共同出資して設立されたネゴシアンです。有名生産者も入っていますが、それを判別することはできません。ワインなどを抜栓した時にラベルやコルクに多くの情報が入っています。ラベルには勿論、コルクには生産者名やヴィンテージなどが印字されていることもあります。例えばですが、ごく稀に古酒において古くなったラベルを新しいものに張り替えており、コルクとラベルのヴィンテージが違うということもあったりもします。抜栓すれば場合によっては生産者が判るのではないかと期待していたのですが、残念ながらコルクも特製のもので判別できませんでした。

ワインのラインナップ
- CHAMPAGNE FREDERIC SAVART(参加者持ち込み)HAUTE COUTURE 2018 deg.1/2023
今回、サヴール クラブ会ということで友人の一人が持ち込んだ乾杯シャンパーニュ。サヴールとサヴァールに掛けて、とのことです(笑)モンターニュ・ド・ランス西側エキュイユ村を本拠地にしています。この作品は、ル・メニル・シュール・オジェ村にある南南東向きの畑のブドウを使用したブラン・ド・ブラン。こちらも特級(グラン・クリュ)の畑です。

口に含んだ瞬間、糖蜜のような柔らかさ、泡のきめ細かさ、立ち昇る明るい黄色の柑橘系香りと樽由来の豊かな香りが良い塩梅。シャンパーニュにありがちな酸化的なニュアンス(ネガティブな意味ではない)が2018年という暑い年柄のシャルドネということもあるのか酒質に円熟感のようなテスクチャーを感じさせます。ドサージュも2g/lと低めですが、酸味と酒質に浮くということもなく、油分のある食事との親和性も感じさせてくれます。揺蕩う澱み、潤むかのようなストラクチャー、鐘の音が聴こえるかのように、太く高く響くかのように伸びる余韻にメニルらしさを感じていました。参加者も酸化の具合が良いですねという話を聞いていました。
- LE SAVOUR CLUB CORTON CHARLEMAGNE 1991
初っ端の白から大当たりを引いてしまいました。会が一気に盛り上がります。状態としてはまさに完璧。1991年は霜の影響と収穫期の雨による弱めな年柄。暑い年が一般的に良いという価値尺度で語られることが多いように感じていますが、このような年ならではの良さを感じることができるでしょう。

年柄らしく、凛として冷たいような性質があり、透明感とコルトン・シャルルマーニュらしい透明の白金を帯びた鎧、鱗のような硬質なもので球体に覆ったようなストラクチャー。内向的な構造美。果実などの実体と輪郭が曖昧になっていくものですが、この酒質の透明感は光が差すように実体を細部まで照らし出すかのよう。このような澱みの無い作品に出会うたびにブルゴーニュ白古酒の佳さを思い出させられます。
個人的にコルトン・シャルルマーニュはこの硬質さが魅力的なワインだと思いますが、ワインとのペアリングにおいて注目しているところは中心部分との親和性をいかに上げるかが肝のような気がしています。ホワイトアスパラガスなどの水分がある野菜ともお互いを邪魔することなく、どちらの個性も愉しむことができました。友人の一人はこれブシャールのコルシャルじゃない?つい直近98‘VTを飲んだ時に似ているとのこと。確かにそんな感じしますね~!と話に花を咲かせます。解答はありませんが、こういうことを言い合うのもまた面白いものでした。
- LE SAVOUR CLUB BIENVENUES BATARD MONTRACHET 1981
状態やや不良。息はしているけれど、蠟燭の灯のよう。暗くなりつつある斜陽。酸化が進んでいるけれど、メイラードのニュアンスがあるが酒質に鈍さは少なく、核まで浸食していないようなそんな感覚。冷えたクロワッサンのような香り、このワイン自体のポテンシャルがそこまでって感じじゃないですか?という声も。

1981年もまた気温の低めな弱い年。確かにポテンシャルもそこそこな所感。アルコール以外の酸化(タール的な)なのかともちょっとニュアンスが異なり、何かが抜けていっているかのよう。飲めないかというとそうでもない。流石は特級のストラクチャー。しかして、うーん…
- LE SAVOUR CLUB BATARD MONTRACHET 1981
驚愕するほどの状態の良さ、完璧。塩ビスケット、レモンブリオッシュなどのバタールらしい香りが際立ちます。そこに見事な特徴的な樽香は一層作品を飾り立てます。厚み、ボリュームのある酒質はふかふかなベッドに沈み落ちていくことを想起するかのような、包み込まれるようなに柔らかさと包容力。金砂のように煌き、溶け込んだストラクチャー。控えめな年にも関わらず、このボリュームは流石バタールというもの。

そして、ほぼ全員から香りの段階で口々に発せられる言葉。「あれ?これ(ドメーヌ)ルフレーヴじゃね?」今回は早い段階で生産者の名前が出てきました。個人的に状態も含めてブルゴーニュワインの魅力を強く実感できる作品だったと思います。
- LE SAVOUR CLUB CONDRIEU 1996 ※ブラインドテイスティングにて提供(参加者持ち込み)
このあたりでブラインド。全員外し。花梨系の果実、硬質な緊張感を持つストラクチャー、中間層はやや隙があるような揺らめき、やや酒質はフラットにも感じられる節もあるが果実のボリュームの残滓にも気づかされる。私ともう一人はラモネを想起。私はシャサーニュ・モンラッシェのモルジョ(粘土が薄いところ)、他はブルゴーニュ・アリゴテ。と全員大外し。ヴィオニエは経年するとその豊かな杏仁や熟れたライチなどの豊かな香りを失ってしまうことしばしば。CH グリエなどの古い作品も硬質な骨格を残して、その特徴は失ってしまいます。曰く、この年代の造りは遅摘傾向が潮流であり、早飲み向けのものであったことなどが考えられるかもしれません。当てられたなと大いに反省。

完全にブルゴーニュワインから探そうとしてしまっていたのもありましたが、ブラインドで出されると意外と取れないのが面白いところ。「実はこれブルゴーニュじゃないんですよ…」そんな出題者の楽しそうな顔とやっちまったという参加者の対比が実に面白く、非常に盛り上がりました。
- LE SAVOUR CLUB ECHEZEUX 1980
状態はやや酸化。エシェゾーは他の特級と比べるとどうも物足りない。そのような声もあったりしましたが、個人的にエシェゾーの魅力は口に含めば溢れんばかりの豊かな球体の赤果実。赤花のブーケ、澄んだ鮮血、命の溜まり場、伸びやかで端正なテクスチャーが素晴らしい印象です。姿経年(酸化)によって輪郭がぼやけ始めて、やや枯れたニュアンスも出てきていますが、飲み進めるうちに感じる全体印象の丸みを帯びたカタチの良さはエシェゾーらしく見事です。

- LE SAVOUR CLUB CHAMBERTIN CLOS DE BEZE 1984
状態は僅かに酸化、酒質に軽度の澱みあり。濃密な深い闇の中に差す一筋の光。クロ ド ベーズに求める高く宙へと天へと伸びてゆくような美しい酸と構造はやはりベーズか!という妙。多少のダメージでは強固な特級の骨格は揺るぎません。個人的に好きな特級の一つ。人によっては状態も気にしつつも(私もそれは理解できるところだが)、作品の表現に満足。個人的にはダモワではと内心思うところでしたが、さてどうでしょうか。

- POL ROGER(参加者持ち込み)BRUT(熟成10年程度?)
一休みに熟シャンパーニュを。状態も素晴らしく、ほんのり香ばしい優しいクリームブリュレのようなニュアンス。泡も細やかで生きており、飲み飽きない心地良さがあります。この美味しさは外さないねと参加者全員にっこり。ここで一旦、回復のシャンパーニュ。

- LE SAVOUR CLUB CHAPELLE CHAMBERTIN 1984
これだけ飲み続けているにも関わらず、目を見開き、驚愕するほどに美しい。これほどの当たりの古酒に思わず声が上がるくらい素晴らしい状態でした。シャペル・シャンベルタンは、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズの斜面下部ということで、より赤果実の豊かさが魅力的ですが、84‘というオフヴィンテージの妙です。まさに赤が澄んでいる。グレートヴィンテージは香りの濃密さ、力強い果実の良さがありますが、84’のような年だからこそ出会える美しさをまさに理解できることだと思います。

伸びやかな酸味と一切の粗さのない美しい艶のある酒質と透明感が同居する今回の赤ワインの最高打点。豊満で蠱惑的、という方向性ではなく、洗練されたスマートさ、控えめなチャーミングさが実に美しい赤ワインでした。素晴らしい!
- LE SAVOUR CLUB COTE ROTIE 1994 ※ブラインドテイスティングにて提供(主催者以外の持ち込み)
先ほどのブラインドで不覚を取ったので、ちょっと本気出す!ブルゴーニュが3人、私ともう一人がローヌ、シャトー・ヌフ・デュ・パプの強めな年?ローヌの射程は間違いなく、暑い熟したピノ・ノワールとも異なる甘さが芯にあり、そのあたりがブルゴーニュとは異なるところです。ただ射程を取り切れてなかったのは大いに反省。強くないヴィンテージとはいえ、赤果実の主張がはっきりとしており、張り巡らされた石灰質系とは異なる様子に気づけずでした。

状態も良く、香りにほんのり動物的ニュアンスもあり、コート・ド・ボーヌに見紛うのも分かるところです。上質なシラーの魅力を楽しめました。
- LE SAVOUR CLUB MUSIGNY 1982
ミュジニーのめんどくささ気難しさは言わずもがな。それが発揮されてしまいました。細い糸が細やかに纏う繭、繊細を束ねたならそれは強固なものになる。それを臨もうかと思っていたら、力強い赤黒果実が覆い、気難しいストラクチャーを開かせることに全員の頭を悩ませました。抜栓一日後などでもよかったのかもしれません。特級ミュジニーはやっぱりめんどくさい。ミュジニーのポテンシャルの高さを理解しつつも、一番荒れたワインでした。

今回のレストランとメニュー
今回はプライベートな会などでよくしていただいている神谷シェフのお店「クアトロ・カンティ」さんで友人がワインを持ち込ませていただきました。
- 菜の花とホタルイカ
程よくカタチも感じられる濃密なソースにホタルイカの味わいのアクセントを受け止めていました。

- 太刀魚、白海老、菊芋のフリットと松戸野菜
毎回、神谷さんの料理を食べるたびに直面する個性の強めな松戸野菜。これに対してのペアリングは何が正解なのか。今回それが分かったのは、強い野菜には強いワインを。つまり状態が最高の強固なストラクチャーを持ったワインに合わせるのがよろしい。見事な香の重層性を表現することができました。

- サギ、馬肉のタルタル、ホワイトアスパラガスの盛り合わせ
ホワイトアスパラガスは白ワイン全般に素晴らしい相性を発揮しましたが、個人的にコルトン・シャルルマーニュとの相性が比較的好みでした。ホワイトアスパラガスの持つ水分と味わいがそのストラクチャーの奥、白果実に焦点を当てて、味わいが複雑に、しかしバランス良く楽しめました。

- ジビエ焼きパテ
赤ワイン全体とペアリングはそれなりに良いものでしたが、個人的にはやや酸化したエシェゾーとのペアリングで損なわれた部分を補完するようにしていたのが良いと感じました。厚みのある果実に肉質、獣香と熟成香と相応する様はアリなのではないでしょうか。

- 牛ほほの煮込みとアニョロッティ・ダル・プリン
今回のお料理で個人的に一番驚いたのはこのアニョロッティ。ソースと生地の相性、ハーブとネタのバランス、実に素晴らしいものでした。ペアリングとしては際立つほどではありませんでしたが、ずっと食べていたい。新店の方でまたイタリアワインとペアリングをしたいと思いました。

- 自家製パスタ「タヤリン」黒トリュフがけ
黒トリュフの香りと上質なシャペル・シャンベルタンはまさに香りの領域、彩度を広げてくれました。そして、細麺のタヤリンも美味しく、チーズなどの香りも良い塩梅。

- 特製いちごミルク
甘やかで苺の甘酸っぱさと香りがひやりとした冷たさとともに引き立ちます。酔っぱらって火照った身体にはとても心地良いデザートでした。

まとめ
今回のワイン会は内容もさながらでしたが、個人的にはただワインを飲みつつ、ご飯食べつつワインなどの歓談したい方々が集ったので、最初から最後まで会話が絶えない非常に楽しく、有意義な会でした。ワインも大事ですが、人がそれ以上に大事だと改めて思った次第です。
今回の特級などを飲むにあたって、あえてバカラのロマネ・コンティグラスなども持参しました。一種のデキャンタの代替として、またストラクチャーが強固で複雑な特級の香りを解かせるグラスとしては素晴らしいことと共に、ワインにおける要素として香りの重要性の再確認を共有できました。
もう一つは今回のオフヴィンテージの特級の佳さについてです。所謂、グレートヴィンテージの開いた時の爆発力のようなもの、ワインの圧倒する味わいと香りとは異なり、洗練された美、澱みのない透明感などまさに控えめな年だからこその佳さを実感できました。一年に一度しか造られない、そのヴィンテージを享受、ワインにはそんなことができる飲み物なのだと思います。
レストラン紹介
- 【Quattro Canti】※クアトロカンティさんは4月1日より移転します。
〒107-0062
東京都港区南青山6-13-18 南青山ロータリーマンション1F
営業時間:18:00~24:00 不定休
- 『ディナーコース』 ¥13.200- / ¥19.800-の2コース
料理のみ、ドリンク別、税サ込み、2名様~のご案内となります。
- 『ディナーワインペアリングコース』 ¥19.800-のコース
料理、ワイン4~5杯、税サ込み、2名様~のご案内となります。
- 『ディナーワイン持ち込みコース』 ¥19.800-のコース
※ご来店歴のあるお客様からの紹介制となります。ワインと合わせたフルコース、ワイン持ち込み代込み、税サ込み、2名様~、貸し切り8名様~のご案内となります。
- 『ワインbar、アラカルト』 21:00~24:00
予約状況により、SNSにて告知いたします。
- 『予約制ランチコース』 12:00~15:00 ¥9.900-のコース
2名様からのご案内になります。
肉ビストロ(ご希望あればお問い合わせください)
ブルゴーニュ特級を愉しむには
今や非常に高価になってしまったブルゴーニュ特級ですが、それぞれの強い個性を持っていることも面白さの一つだと感じています。気合を入れたワイン会、特別な今回のようにテーマを決めてワインを共有できる人たちと分かち合うことはとても有意義なワインの使い方、愉しみ方だと思います。
おすすめブルゴーニュ特級
以下4銘柄はワイン館にて店頭販売中です!!
- ドメーヌ・ルフレーヴ / ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ 2021 税込275,000円
- ドメーヌ・アンヌ・フランソワーズ・グロ / リシュブール 2019 税込165,000円
- ドメーヌ・ピエール・ダモワ / シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ 2018 税込154,000円
- ドメーヌ・ポンソ / シャペル・シャンベルタン 2019 税込79,200円
さいごに…
信濃屋のネットショップやワイン館にも様々なブルゴーニュ特級もご用意がありますので、もしご興味がありましたら是非、足を運んでいただければ幸いです。ワイン館をふらふらしていることもありますので、お声がけいただければご案内させていただきます。